2022年第二話 畑の水対策その1(縦穴排水)

2022年第二話 畑の水対策その1(縦穴排水)

2022-08-30


畑の水たまりを無くすため縦穴排水路を設置しました。

気抜きパイプを設置し土中環境の改善を行っています。

はじめに

畑に雨が降ると水たまりができます。ぬかるんで歩きにくくなります。
耕作放棄地、つまり手を入れられていない畑では、定期的に土を耕していません。表層が硬くしまって土の目詰まりが進行し、水を吸い込まなくなっています。
また水勾配がついていない畑では水は流れず、デコボコの表土で水たまりが生じます。降雨時には地表面で滞留し冠水を起こして、栽培している農作物にも影響が生じます。
縦穴排水

今回この現象を改善するため縦穴排水路を作り、土の表層を走る水を土中に逃がすよう試みました。

表層を流れる水と浸透のメカニズム

雨は天から地面に向かって降り注ぎます。
土の表層を伝わって、地表面の高い場所から低い場所へと流れます。流れなかった水は地表面から土中に染み込みます。

地中に染み込んだ水は、耕盤を通じて心土(硬盤)表層まで染み込み、土中で水分として保持されます。
一部の水は海水面や岩盤まで染み込みますし、晴れれば粒子の間に保持された水は蒸発して、土の保水性が維持されます。

縦穴排水

しかしながら土が過度に締め固まると、粒子が目詰まりしてとても硬くなり水が染み込まず、また蒸散もできなくなります。
心土(硬盤)がありその深さで水が保持されてしまうと、水が嫌気性腐敗を起こしてしまいます。
地中の水が蒸発できず地中で腐敗してしまいます。

つまり嫌気性腐敗を起こした土が嫌気性細菌やバクテリアの増殖を生み、最終的には土をグライ化してしまいます。
こういった状況を防ぐため、田んぼや畑では定期的に耕すことで嫌気性腐敗による土の痛みを防止して、土の健康を確保しています。

木根の深さが示す降雨時の地下水位

地面が水を吸収するためには、固くなった地表面において水がどのように染み込むかを調べることが必要です。

まずは表土にペットボトルの水を撒き、水の染み込みを確認します。
すると畑のいくつかの場所で水がいつまでも染み込みませんでした。
つまり土がぬかるんで水溜まりとなる可能性があることが判りました。

次に降雨時の地下水位の上昇を調べてみました。硬くなっていた表土を掘り返しました。
表層20cmまでが堅土となっておりました。山砂以外に砕石、廃瓦が埋まっていました。

縦穴排水

この深さで再度ペットボトルから水を撒いて水の染み込みを確認しました。
表土ではいつまでも水が染み込まず弾かれていたのですが、表層20cm以下では埋め立てた山砂の間から水が染み込み、下層に流れていくことが判りました。

そこで掘り起こした際、現れた石や廃瓦をきれいに層化して埋め戻し、縦穴排水路としました。

耕作のための水はけと地下水位

この土地を手に入れた当初、気になったのは雑草の生え方でした。
バラ科のノイバラの根が木化して土地いっぱいに広がっていました。
主枝はとても刺々しく、根も主枝も木化しており、苦労して伐採・抜根を行いました。

縦穴排水

植物の根のメカニズムからすると、水を確保するために根を張ります。
地下水位の上昇が低ければ水を求めて根を深く張ります。
また地下水位の上昇して地表面に近くなるようであれば、根を深く張らず根は水平方向に広がります。

今回木化した根を引き抜く際、チェーンブロックを使うことで木根が引き抜きやすかったことが気になっていました。
ノイバラの木根が表土30cmまでの深さで横方向にひろがっており、木根の広がり方から地下水位の深さと水位が上昇する可能性を指し示していました。

縦穴排水

雑草の根については根そのものが腐ることによりその場所に土の微細空洞化が施されます。空気や水が土中を循環することで、耕されたと同じ効果を産み出すことも判りました。
そのため雑草を縦穴に埋めてさらに土を被せることで、適切な水の浸透を行うようにしました。

そうすることで部分的に荒れているように見えたこの土地にもあちこちでミミズが出現し、土の健康性が保たれるようになり、土の状態が改善していることが判りました。

水抜きのための縦穴排水

もとは田んぼですので心土層があるはずで、本来そこまで掘り進まなければ水はけが確保できないはずです。

今回土を掘り返して確認することで、地表面から30cm程度の深さで地下水位が最高になる層があり、つまりその深さまで水を流すことができれば、水捌けが確保できることが判りました。

縦穴排水

実は地下水位をどの程度の深さに設定するかについては、栽培する作物の根の深さによります。この深さが必要最低限の耕運深さになります。

育ててみたい作物によって根の入り具合は変わり、一般的には大柄の作物ほど根が大きく深くなります。
例えば根野菜であれば、根の深さに応じた地下水位の関係を考慮する必要があり、地表面積と保水力の関係により水抜きポイントを決めるカタチになります。

今回は、砕石・細石と廃瓦、枯れ草と竹、そして土を組み合わせ、水抜きとなる縦穴を施工しました。

気抜き穴による土中環境の違和感の改善

掘り起こした土地の数カ所で違和感のある臭い、腐敗した土の臭いがする場所がありました。部分的に土が悪い状態になっていました。

表土からは推測できなかったものの、土中に石化した粘土質の塊があり、雨や水が染み込みにくい場所があるようなのです。

縦穴排水

部分的に粘土質の土が硬化したところでは、水が染み込まず土がぬかるむとともに、腐敗を進行させているようでした。

縦穴排水

そこで、劣化した土を掘り起こして太陽光にあて消毒し、砕いた炭を混ぜて埋め戻しました。
また地中の風通しを良くして嫌気性細菌の活動を抑えるため、節抜きした竹による気抜きパイプを設置して地中の換気を行いました。

まとめ

畑の水たまりは水の集まる場所です。

縦穴排水

この水たまりに縦穴排水を設置することで、畑の水たまりを効果的に地中に逃がすことができることが判りました。